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出人悪酒とマイケル

金曜日の22時。
珍しく誰もいないオフィスを施錠。
週末だし…と、新栄のロックバーに出かけた。
静かに一杯だけマスターと呑むはずが思いがけず深酒になった。
帰り道、ワシは1992年に訪れたニューヨークの
できことを思い出した。

DSC_0002.JPG


1992年の春。


リクルート勤務時代のワシは、約半月の有給を取得。
知人とニューヨークに渡り、
10社以上の広告代理店や制作会社を見学しまくる
…という旅に出た。


帰国の前日夕、
全日程最後のスケジュールを終え、
ロックフェラーセンター前の屋外バーでKirin Ichibanで乾杯。
同行した知人と旅で学んだことのおさらいをする。
決して恋バナなどではなく、
マジメにそんなことを話していたのを記憶している。
本当にマジメだった。


突然、声をかけられた。
「ニホンデシゴトヲスルヒトデスカ?」
スーツ姿のクラーク・ケントのようなハンサムガイである。
それがDavid Walsh氏との出会いだ。


彼の仕事は弁護士で、
三菱商事などの大手日本法人がアメリカ進出の際に
提携企業とのコーディネートや交渉をする仕事をしていると言い、
次々とおもしろい話をしてくれた。


「デヴィッド・ウォルシュ 出人悪酒」…と日本語で紙に書いた。


仕事を尋ねられ、ワシが社名を伝えると、
彼は創業者のフルネームと同氏のスキャンダル事件について語り始めた。


「今買ってきたばかりだ」と言って
紀伊国屋の紙袋から何冊かの和書を見せてくれた。


日本人はみんな驚く、と、
「憂鬱」「大學」という漢字を目の前で書いた。
ワシより漢字を知っていた。


ワシらが次の日、
日本に帰らなければならないことを伝えると
「今夜ハシゴしましょうか!」と声をかけてくれた。
ワシは喜んで二つ返事で快諾したが、
知人は二の足を踏んでいた。


スーツ姿の日本人2人に声をかけてくるなんて、
あやしいペテン師か男色系のアブナイ兄ちゃんなんじゃないか?と。


…今、冷静に考えれば、
十分にその心配があるのだけれど、当時のワシは疑わなかった。
単純に誘いに乗ってしまった。


そのジャッジ、正解だった。


ワシが将来の夢を話すと彼は言った。
If you believe you can make it !
この時にDavid氏からもらった勇気は今も忘れない。


帰国後もしばらくは連絡を取り合っていた。
ニューヨークに行く友人たちにも紹介して、みんなDavidに世話になった。
しかし徐々に疎遠になり、
今はどこで何をしているのか知らない。


…と、
今回はこんなに長い話が、実は前フリです。


先週、金曜日に寄ったロックバー。
カウンターの隣には見かけぬガイコク人がいたので
「ニホンデシゴトヲスルヒトデスカ?」
と声をかけた。


それがオーストラリア人のマイケルとの出会いだ。


マイケル曰く
国を超えたエンレンで日本人の彼女にフラレる寸前。
メルボルンのホテルでマネージャーとして勤務しているけれど、
休暇をとって彼女を説得に来た。
しかしまったく相手にしてくれずあきらめたばかりで
このバーに飲みに来た。


「彼女は仕方ないけれど、
日本の環境ついては気に入っているのでぜひ日本で仕事をしたい!
でもあと二週間で帰らなきゃいけない。
しかし就労ビザを取得できて、
現職と同等の地位と収入を得られるフルタイムの仕事は
なかなか見つからない」


マイケルは初対面のワシに大いにボヤいた。


しかしホテルマンとしての
キャリアとホスピタリティについてはとても自信を持っていた。
そしてワシはカタコトで言った。


I believe you can make it better!


かつて異国で勇気付られたワシが
二十年近く経って今度はワシが外国の30オトコを励まし、
硬く握手をして別れた。
一期一会。大事な出会い。
マイケルが幸せになってくれることを願っている。


コメント (6)

toz:

80年代半ばでしたか、若いうちにNYに行きなさい。そして道路端の消火栓にでも座って、待ち行く人を見てみなさい。きっと人生観が変わるから…と僕に言ってくれた上司がいました。その後に具体的にどう活きたかはわからないところもありますが、人種のルツボ、という言葉を実感し、また世界の中の日本、日本人という考え方を、少しするようになったかもです。

で、ですが、僕も92年6月に二度目のNYにいました…

秀さん、この話いい!
僕は、シリコンバレーでこの人(日本人)に勇気をもらった記憶があります。定年後にシリコンバレーで起業して、裸一貫で立ち上げた人です。http://www.svjen.org/archives/staff/hiromu_soga.html

助っ人稼業:

If you believe you can make it !

落ち込んだら
自分に投げ掛けてあげようと思いました。

これからも不景気を吹っ飛ばすブログを楽しみにしています。

伊藤秀一:

Tozさん
コメントありがとうございます。
スパムコメントに埋れて返信が遅くなりました。
申し訳ありません。

その上司の方の一言もサイコーです。

え?92年の6月ですか?
ワシはたしか5月の半ばから6月の頭まででした。

ニアミスですね。

伊藤秀一:

前チャン

コメントありがとうございます!
スパムコメントに埋れて返信が遅くなりました。
申し訳ありません。

異国でもらった勇気って
なんだかすごいパワーですよね。

前ちゃんのもいい話。
また共有しましょう。

伊藤秀一:

助っ人稼業さん

コメントありがとうございます。

スパムコメントに埋れて返信が遅くなりました。
申し訳ありません。

私もね、この言葉、
二十年以上経っても忘れないんですよ。

信じるって大事ですよね。

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2011年2月 5日 22:44に投稿されたエントリーのページです。

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